大阪府立大學

現代システム科學―それは

「つながりの物語」を科學すること

つながりの物語

この世にあるすべてのものは、他のすべてのものとつながり合っています。それだけではありません。それらは「つながりの物語」を持っているのです。その「つながりの物語」を解明していくのが、私たちの提唱する「現代システム科學」です。科學という言葉を使っていますが、そこには理系と文系の學問の両方が含まれています。さまざまな視點から「つながりの物語」を見ていき、そしてそれらを大きく結び合わせていくのです。

一皿の料理から

食卓の上の一皿の料理を例にとって、「つながりの物語」を見ていきましょう。お皿にはおいしいお刺身の盛り合わせが乗っています。これらの魚の中には遠く大西洋まで行って捕まえてきたものもあります。たくさんの人たちが長い時間をかけて航海をし、冷凍にして持ち帰ったものです。日本では古くから沖合漁業も行われていましたが、大型船で何ヶ月もかけて地球の反対側まで捕りに行けるようになったのは第二次世界大戦以降のことです。「いろんな魚をたくさん食べるのは日本の伝統だ!」というふうに思われるかもしれませんが、今のように世界中の魚を毎日食べられるようになったのはつい最近のことなのです。このことは、伝統とは何なのか、社會の近代化とは何なのかという問いにつながっていきます。また、その魚は大西洋でどのような回遊をし、何を食べて生活しているのか、地球溫暖化でその生活は変化したのだろうかといった、生態學や海洋學の問いも生まれてくるでしょう。

ハウス栽培とエネルギー

もう一度食卓の上を見てください。お皿には新鮮なくだものが乗っています。中には今の季節では普通採れないものもあります。これはどこで作られたのでしょうか。実はハウス栽培で作られたものです。ハウス栽培をすれば、旬の季節ではない時期にでも、おいしいくだものを作ることができます。でもハウス內の溫度や濕度を細かく調整するためには何らかのエネルギーが必要となります。電気を使うとすれば、電力會社の送電線から電気を買わないといけません。その送電線の先には、大きな発電所があります。福島の原発事故以降、エネルギーをどう確保していけばよいのか大きな議論が続いていますが、食卓のくだものの「つながりの物語」は、実はここまでつながるのです。

つながり合う流通システム

食卓の魚やくだものを、私たちはどこで手に入れましたか?スーパーやコンビニで買ってきたのですね。ではなぜ夕方の時間にそれらのお店に行くと、きちんと魚やくだものが置かれているのでしょう。それは、私たちがどんな時間にどんなものを買うのかという行動パターンが細かく調べられていて、ちょうどぴったりの時間に売れ筋の商品が並ぶように計算されているからです。それを可能にしているのが、日本全國に張り巡らされた流通のシステムです。このようなシステムのおかげで、適切な商品を、適切なタイミングで消費者に屆けることが可能になりました。このような人間の購買行動にもとづいた生産?流通システムも「つながりの物語」の一つといえるでしょう。

地球環境を破壊しない物づくり

スーパーやコンビニに置かれた商品は、有名なメーカーのものがほとんどです。しかしよく目をこらして見ると、地元の小さな企業が作った地域にこだわった商品や、名前を聞いたこともないベンチャー企業が作った、環境に配慮した商品なども意外と多く置いてあります。消費者にヒットする商品がなぜ生まれるのかを知るためには、人々の購買行動の背後にある心理を知らなければなりません。そして、その心理のさらに背後には、現代社會における幸せとは何なのか、欲望を満たすだけで人間は豊かな生を送れるのか、人間が生きることの意味は何なのかという哲學や倫理の問いが隠されています。

すべては「つながり」から生まれてくる

現代社會の「つながりの物語」は、このようにどこまでも果てしなく続いていきます。古代インドに生まれたゴータマ?ブッダは、「すべてのものは、つながりの中から生まれてくる。孤立して存在するものは、この世に何一つない」という世界観に到達しました。現代システム科學とは、このような「つながりの物語」を、現代的で新しい方法によって解明し、人々が幸せに生きていくことのできる地球社會を創造していくための學問なのです。

現代システム科學―それは「サステイナビリティ」

地球環境問題の登場

人類の歴史を振り返ってみましょう。紀元前に各地で文明が誕生し、長い時間をかけて世界中に人が住むようになりました。地球の人口は少しずつ増えていきました。18世紀に産業革命が起き、人類は石炭や石油などの化石燃料を使って、工場でたくさんのものを作ることができるようになりました。また大規模農業を行なって、食料をたくさん作ることもできるようになったのです。その結果、20世紀の100年間に、地球の人口は數倍に膨れあがりました。工場からは汚染物質がどんどん排出され、地球上のあちこちで化石燃料を燃やし続けました。化石燃料には限りがありますから、いずれは枯渇してしまいます。燃やすときに出てくる二酸化炭素が大気中にたまっていき、地球溫暖化をまねいていると考えられています。新しい燃料として期待されていた原子力も、あちこちで事故が起きていますし、核廃棄物を安全に処理する方法も見つかっていません。

いま楽しければよいのだろうか

もちろん、日本にいる私たちが、あふれる商品や食料に囲まれて、「いまこの瞬間」だけを楽しみたいのなら、それでもいいのかもしれません。しかしながら、私たちが化石燃料を獨占してしまったら、將來の子どもたちのエネルギー源がなくなってしまうことでしょう。私たちがいまのライフスタイルを楽しんだおかげで、將來の子どもたちに大きな被害が及ぶかもしれないのです。「いま楽しければいいのだ。將來の子どもたちのことなどは知らないのだ!」というわけにはいかないのです。

サステイナブルな社會とは

いま生きている私たちだけが楽しく生活できるのではなくて、私たちも楽しく生活できるし、將來の子どもたちもずっと同じような楽しい生活ができるような社會、それを「サステイナブルな社會」と呼びます。サステイナブルな社會とは、持続可能な社會という意味です。いまの社會が、大きく崩壊することなく、將來もずっと続いていけることです。サステイナブルという言葉は、「サステイナビリティ」という名詞から來ています。日本語では「持続可能性」と翻訳されます。

地球社會は格差がある

ところで、日本の國外にまで目を広げてみましょう。そこには、日本とはまったく異なった狀況があります。アジアやアフリカの國々では、いまだに戦爭や內戦が続いています。住むところを追われた人々が、何萬人、何十萬人という數で國境を越え、難民として苦しい生活を送っています。また急速に工業化の進んでいる地域では、工場からの有毒物質のたれ流しや、ひどい大気汚染によって、人々の健康がむしばまれています。このような地球社會が、現在のままの狀態でずっと持続されていってもいいのでしょうか。當然、それは良くないことですよね。地球環境全體のことを考えても、二酸化炭素をどんどん排出して、溫暖化をまねいている現狀を、そのまま持続していったらたいへんなことになります。

人々の尊厳と幸福

私たちは、地球上のすべての人々の尊厳(尊さ)が守られ、すべての人々が幸福をめざして生きていけるような社會を作り上げ、それを持続可能なものにしていかないといけないのです。そのためには、自由、人権、平和など、いままでの人類の歴史が培ってきた大切なものをきちんと守りつつ、地球上のひとにぎりの人々だけが得をするような社會の構造を変えていかなければならないのです。と同時に、私たちが手にしている科學技術をどのように使っていけば、それがもっとも私たちを幸福にするのかを、あらゆる角度から検討してみなければなりません。また人々を真の意味で豊かにする経済システムのあり方とは何かを正面から考えてみる必要があります。

さまざまな學問からアプローチする

現代システム科學とは、人類の將來を見據えた「サステイナビリティ」を科學する學問です。私たちは、地球環境學や生態學などの自然科學の視點からだけではなく、現代社會を解明する社會科學や経済學、歴史學、人間の心を解明する心理學や文化學、さらにそれらの知識を共有するための情報システム學など、さまざまな學問からアプローチすることによって、持続可能な社會をどうやって作り上げていけばいいのかを考えようとしているのです。

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